yom yom 3

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ドロップスは神さまの涙/重松清

いじめと意地悪ってどうちがうんだろう?意地悪には愛情があるような気がする。裏返し。「ん〜、もう〜、意地悪♪」っていう感じ。だから主人公はいじめじゃなくて意地悪だって思おうとしてる。いじめられている自分を否定したいのだ。だからいじめは表面化し難いと言えるかもしれない。ほんのちょぴり幸せになれるドロップスの味。いいなあと思う。

急降下するエレベーター/川上弘美

男と女の関係はわからないということが言いたいのだろうか?佐羽はとにかく変わった女の子だと主人公は思っているのだけれど、さして変わっているわけではない。「孤独が好きなの」と恋人がいない時に嘯くことは誰にだってあるし、好きな人ができたら、できたで人格が変わってしまったかのように尽くすことだって、珍しいことではない。お金を貢ぐことだって、一緒に死のうと思いつめることだって、よくいる普通の人がやることなのだ。だから佐羽は特別でも変わっているわけでもないと思った。

銃を撃つ/沢木耕太郎

タイトルだけを見るとハードボイルドなのだけれど、中身は久しぶりに幼なじみにバスで出会った女子高生のお話。不幸の手紙って今でもあるのかあと感心した。今目の前にいる幼なじみが差出人なのではないかとお互いに勘ぐる。違うと分かった主人公は、相手と分かれてから郵便ポストを指差して撃つ。だから撃ったのは銃ではなく、疑う気持ちを砕くために放った、自分の中にある相手を信じる気持ちだ。

ほたてステーキと鰻/北村薫

この作品にジャンルはズバリ、レズ小説。台所で寂しさに耐えられなくなった女性が主人公。最初、娘が自立してしまって寂しいのかと思ったら、大親友だった女性が亡くなったことによる気落ちだった。さて、ほたてステーキだ。逝った彼女との共通の友人の笑い話に登場する。気落ちしている主人公を元気付けようと話してくれたのだけれど、主人公は余計と明暗を感じてしまう。そして鰻。買った鰻弁当に鰻が入っておらず、何もかもうまくいかないと肩を落とす。けれど、お詫びに送られて来た美味しそうな蒲焼を見て、一人微笑みながら件の友人にあげようと思うのだった。

永遠の片割れ/唯川恵

セックスの相性だった。人間にはピッタリフィットする相手がいるらしい。そんな人と出会ってみたいものだけれど、ほとんどの人は出会うことなく人生を終えるらしい。で、たまたま、偶然、天文学的な確率に当たってしまった男女のお話。エロい。天文学的な確率の相手とはエロエロなことしか考えられないらしい。それもなんだかねえ。二人の結末はちょっとどうよって感じだった。

アイドル/角田光代

社会の奴隷にのようなサラリーマンだけはなりたくない。そんな夢追い勘違い系の人々が角田光代さんの小説によく登場する。今回の主人公もその一人。yom yom 2で登場したくまちゃんとの連作になっている。今度はくまちゃんが主人公だ。彼女のためにサラリーマンを選んだのに、彼女はロックアイドルの元へと行ってしまう。前作の「くまちゃん」ではふらりと現れ、ふらりと姿を消した彼が、今度は彼女に振られて、恋愛感情や失恋の苦しさを知る。今まで自分がして来たことが相手をどんな気持ちにさせて来たのかを痛感する。

サンドイッチの夏/加藤実秋

退屈な高校生のイタズラ日記というところだろうか?いやな国語教師を「ぎゃふん」と言わせるために計画を実行する。プールの竣工式に狙いを定めた彼女たちは竣工式前夜に真新しいプールに忍び込む。みんなで集めた「ブツ」を沈めるが……。プールの底にデッキブラシをかける彼女らにそっと差し入れされたイチゴサンド。なんか高校生っていいなあって思える「ぼっちゃん」を思い出す青春小説なのだった。

宙/阿川佐和子

娘の友達の妹と駆け落ちしてしまう父親。盲目というハンディを負目に感じながら好きな人からのプロポーズを受け入れられない娘。タブーなんて何も無いのだと父親は言っているようだ。それにしても会社にも行かずに、駆け落ちした二人は一体何をしているのだろう?それが気になって今一歩すっきりしなかったあ。

eat me/嶽本野ばら

好きな人のために、死を選んでしまうというよく神話なんかにあるようなお話。タイムマシンでいかなければ会えない相手が果たして赤い糸で結ばれた唯一の人と言えるのだろうか?という突っ込みは不要なくらい、導入も展開も落ちもドラえもんチックなお話でした。

青葉闇迷路/光の領分/恩田陸

恩田陸っぽいなあという感じ。お父さんが叔母さんの日記を手渡してくれた理由は?叔母さんの日記には何が書いてあったの?輪って何さ?そこに入ると性転換ができるっていう設定は物語の何に関係があるのさ?さっぱりでした。