東京タワー/江國香織
- 作者: 江國香織
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2001/12
- メディア: 単行本
- クリック: 38回
- この商品を含むブログ (224件) を見る
南図書館
こんな幸せな大学生がいてもいいのか、と訝しくなる。いや、羨ましくなる。透と耕二という二人の対象的な大学生を描いた作品。二人の性格を色濃く出すためなのか、不倫相手に詩史と喜美子という人妻が登場する。二人の女性は表裏の関係で、透と耕二の性格を暗喩していると思うのだがどうだろうか。どちらもちょっとお金に余裕のある大人の女だ。感情をあまり出さず、けれど自分の思い通りに男を操る詩史と、激しく相手にぶつかっていくが、自分の思い通りに行かず常に満たされない喜美子。それぞれの関係を、ほぼセックスだけをモチーフにして表現されている。とにかくセックスをしまくる。普通の男子大学生がこんな良い思いができるとは思えない、という点でリアリティに欠けていると思うが、理想という意味ではとても共感できる妄想だった。男子大学生の心情を描きたかったのかもしれないが、詩史と喜美子という三十を越えた女性像を描いた作品となってしまっている気がする。