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野心のすすめ/林真理子

野心のすすめ (講談社現代新書)

野心のすすめ (講談社現代新書)

前半は校長先生的な頑張れば報われる論。後半は女なる者かくあれ論。そして全般に羨ましいという心こそ、野心の源泉であり、自分が獲得して来た「今の自分」の源泉であるというお話し。こう書くと、なんか本書を否定している感じがするけれど、決してそうではない。林真理子さんは大好きだし、バブル入社世代としては、一世代前に時代を切り拓いてくれた人という印象が強い。彼女がいなければ、こんなに自由にモノを言える環境はやって来なかった気もするし、ひょっとしたらブログ文化だってこんなに日本で受け入れられていなかったかもしれないとすら思っている。自分の欲しいものを手に入れる方法はいくつかあると思うけれど、彼女は自分の力で誰からも奪わずに「創造」したのである。羨ましくて仕方がない。

ロスジェネの逆襲/池井戸潤

ロスジェネの逆襲

ロスジェネの逆襲

半沢直樹三作品目。今回も半沢直樹は格好良く銀行の悪いやつらをやっつけてくれる。しかも、今度の相手は副頭取。さすがにそれは無理でしょう。とツッコミたくなるが、今回もそんなツッコミなんて跳ね飛ばす勢いで弱い者、正直者の味方をしてくれる。ところで、企業買収が証券会社や銀行にとって、こんなに美味しいビジネスだとは知らなかった。

オレたちバブル入行組&オレたち花のバブル組/池井戸潤

オレたちバブル入行組 (文春文庫)

オレたちバブル入行組 (文春文庫)

オレたち花のバブル組 (文春文庫)

オレたち花のバブル組 (文春文庫)

半沢直樹の続きが早く知りたくて、読んでしまった。テレビドラマと同じくらい、テンポよくドキドキハラハラがやって来て、そしてスカッとする。典型的な水戸黄門プロットなのだけれど、ハマってしまう。半沢直樹的な生き方はちょっと無理だけれど、どこかでずっと出来たらいいなと誰もが思っている。組織の中には上しか見ないヤツはいくらでもいるし、時には自分だってそうしているし、それに背くことは給料はいらないと言うこととほぼ同義なのだということをみんな分かっているから面白いのだ。みんなの出来ないことをしっかりやって、そして言ってくれる。よく読むと、ツッコミどころ満載なのだけれど、そんなことはどうでもいいくらい面白い。

アップル帝国の正体/後藤直義・森川潤

アップル帝国の正体

アップル帝国の正体

アップル依存してしまった日本の物作りを地道な取材によって明らかにし、その問題点と今後の課題を提示している。驚いたのは、著者が意外にも若いこと。ルポとしては完成度が高く、文章も読みやすい。アップル成功の鍵はジョブズの審美眼だけではなく、それを支えるビジネスマン集団であることが良く分かった。徹底的な調査と交渉力で技術力を持った企業をアップル漬けにし、より安く、より多く、高品質なモノ作りができる企業へと矛先を変えてゆく恐ろしいまでの貪欲さには驚いた。かつてジョブズが憧れたソニーを葬り去ったアップルが、ジョブズ亡き今、人々に新たなウォンツを提示できないアップルは革新的な急成長企業から、普通の優良企業へと成り下がりつつある。

二十年以上のアップルファンとしてはそれでは困る。MacintoshSE30やiMaciPod、そしてiPhoneを僕たちに提示してくれたアップルに戻って欲しい。

まちがい/辻仁成

まちがい

まちがい

思いつきがちなネタというか、サスペンスなんかでは良く使われるネタだと思うのだけれど、辻仁成氏の手に掛かると、スケールがデカくなるというか、純愛の逃避行ものに変換されてしまう。外国で愛し合う二人が離ればなれになってしまい、お互い求め合い、「探し合う」もしくは「待つ」パターンは辻仁成氏の十八番。でも、もう少し出会うまでに紆余曲折があった方が辻流なのでは?個人的には、最後のどんでん返しがあってもいいかなと思って読んでいた。最後の最後に、冬はやはり大悟の支配下にいて、ただ秋声を陥れるための芝居をしていて、秋声は立ち直れないくらいどん底に堕ちる。それが現実だ、というくらいオチがあっても面白かった。

男どき女どき/向田邦子

男どき女どき (新潮文庫)

男どき女どき (新潮文庫)

鮒の描写を読んだとき、向田邦子さんは鮒を見て、この不倫話を思いついたに違いないと思った。なるほど、鮒は無表情で鉛筆のような目をしている。なんとか、この無表情な生き物に何かを語らせることはできないだろうか?できたら、絶対に面白くなる。そう思ったにちがいない。女の、妻の直感が、鮒の無表情から夫の心を読み取ってしまう女の怖さを描いた物語。

ビリケンは、大阪のビリケンさんのことだと思うけれど、知らない人にはさっぱり分からないのでは?とちょっと心配しつつ読んだ。

エッセイは、やはりちょっと昔の女性っぽいというか、女性らしくみたいな気負いを感じてしまった。きっと、今、向田さんが書いていたら、もっと鋭く、えげつなく、女の視点を表現してくれていたと思う。とても残念。

桐島、部活やめるってよ/朝井リョウ

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

図書館で予約したものの、2ヶ月くらいマチだった。

もう何年も思い出すことの無かった高校時代の様々なシーンが、文字を追う度に次々と蘇ってくる。教室の埃っぽい匂いも、湿っぽくて、とことん汚かった部室も、駅前の駄菓子屋さんも、昨日のことのように思い出させてくれる。

ちなみに、桐島は一度も登場しない。