アップル帝国の正体/後藤直義・森川潤

アップル帝国の正体

アップル帝国の正体

アップル依存してしまった日本の物作りを地道な取材によって明らかにし、その問題点と今後の課題を提示している。驚いたのは、著者が意外にも若いこと。ルポとしては完成度が高く、文章も読みやすい。アップル成功の鍵はジョブズの審美眼だけではなく、それを支えるビジネスマン集団であることが良く分かった。徹底的な調査と交渉力で技術力を持った企業をアップル漬けにし、より安く、より多く、高品質なモノ作りができる企業へと矛先を変えてゆく恐ろしいまでの貪欲さには驚いた。かつてジョブズが憧れたソニーを葬り去ったアップルが、ジョブズ亡き今、人々に新たなウォンツを提示できないアップルは革新的な急成長企業から、普通の優良企業へと成り下がりつつある。

二十年以上のアップルファンとしてはそれでは困る。MacintoshSE30やiMaciPod、そしてiPhoneを僕たちに提示してくれたアップルに戻って欲しい。