男どき女どき/向田邦子

男どき女どき (新潮文庫)

男どき女どき (新潮文庫)

鮒の描写を読んだとき、向田邦子さんは鮒を見て、この不倫話を思いついたに違いないと思った。なるほど、鮒は無表情で鉛筆のような目をしている。なんとか、この無表情な生き物に何かを語らせることはできないだろうか?できたら、絶対に面白くなる。そう思ったにちがいない。女の、妻の直感が、鮒の無表情から夫の心を読み取ってしまう女の怖さを描いた物語。

ビリケンは、大阪のビリケンさんのことだと思うけれど、知らない人にはさっぱり分からないのでは?とちょっと心配しつつ読んだ。

エッセイは、やはりちょっと昔の女性っぽいというか、女性らしくみたいな気負いを感じてしまった。きっと、今、向田さんが書いていたら、もっと鋭く、えげつなく、女の視点を表現してくれていたと思う。とても残念。