私の男/桜庭一樹

私の男

私の男

第138回直木賞受賞作品。北海道南西沖地震と近親相姦と純愛ドラマとを適量ずつボールに放り込んで、形が崩れてしまわない程度に柔らかく混ぜ合わせて、しばらく寝かせて味を馴染ませました、という感じのぶっ飛んでいるけれど、切なくて、愛おしい物語。過去に遡る形で章が進む。淳悟と花との関係の秘密と愛情の深さと異常性とがどんどんひも解かれてゆき、読後感としては第一章を全否定してしまいたくなってしまう。どうして花は結婚しなくてはならなかったのかという根本的な疑問に打ち当たってしまうのだ。思わず再度読みたくなるし、二度目に読む時は最後の章から読んでみたい一冊。