続・日本人の英語/マーク・ピーターセン

続・日本人の英語 (岩波新書)

続・日本人の英語 (岩波新書)


前作「日本人の英語」が面白かったので、続編も手に取ってしまった。期待を裏切らず、随所でえ?そうなの?という日本人の英語表現を教えてくれている。
面白かったのは、日本文学の英訳の比較である。マーク・ピーターセンは、ここで英訳の是非を議論するつもりはない。日本語の行間に潜む裏の意味をどう英語にするかを検討している。
例えば俵万智「サラダ記念日」の英訳本から『朝のネクタイ』を引用。
電話から少し離れてお茶を飲む
聞いてないよというように飲む
【1】My father sitting a short distance from the phone,over his tea. Drinking as if he is not hearing a single word.
【2】Moving away from the telephone  he sips his tea as if to say "I'm not listening"
確かに【2】の方がいい。ここではhear と listen の違いを議論しているので、話題にはならなかったけれど、個人的には【2】のsipがいいと思う。ちびちび口を付ける感じがして、聞いてないよというけれど、ちょっとだけ気になって耳に意識を集中してしまって、飲む口が疎かになっているという感じが伝わってくる。いわゆる「行間」を英語なりに表現できているのではないかと思う。それに、【1】のsitting a short distance fromよりもmoving away fromの方がわざわざ離れている感じがする。
こういう読み比べは英語表現を憶えるに当たって本当に勉強になる。