溺レる/川上弘美

溺レる (文春文庫)

溺レる (文春文庫)


川上弘美は静かにエロい。じわじわとせりあがってくるような女の欲望なのだろうか?でも、このアンソロジーのテーマはエロではない。解説の種村季弘さん曰く「逃げる」らしい。色々な「場」から逃げる。そして登場するのはつまらない女たちなのだ。つまらない女だから逃げるのか?つならなくなければ「そこ」から逃げる必要はないということなのか?その辺のところはよく分からない。ただ逃げる。誰もいない道へ。子供の時代へ。心中の果てに、時代を超えて逃げる。「亀が鳴く」ではつまらない女の部屋に逃げているのらしい。みんな自分から、遠ざかろうとしている。