ピアニシモ/辻仁成

ピアニシモ (集英社文庫)

ピアニシモ (集英社文庫)


辻仁成のデビュー作。この間、ピアニシモ・ピアニシモを読んだので、元の話が気になって手に取ってしまった。解説を書いた島田雅彦氏は「苛立ち」と書いていたが、この作品に流れる空気は「あきらめ」ではないかと思う。親も主人公も主人公を苛める同級生も、教師も「あきらめ」に支配され、どこにも踏み出せないでいる。苛立ちまで到達しない「無」の感情がそこに描かれているのだと思う。