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文學界6月号

文学界 2009年 06月号 [雑誌]

文学界 2009年 06月号 [雑誌]

白い紙/シリン・ネザマフィ

第109回文學界新人賞受賞作品。イラン人の著者が、日本語でイランの青春恋愛小説を書いている。選評はなかなか厳しいものの、風景が浮かび上がるような緻密な描写は日本人を超えていると思う。日本語の特徴を前面に出しすぎたせいか、「私は」が一切ない。不自然ではないが、小説というよりは日記になってしまったような気がする。

歓び組合/墨谷渉

前号に掲載された潰玉といい、今回の作といい、この人はきっとM男なのだろうと思う。女性にぐちゃぐちゃに殴られるのことに快感を覚える性質に違いない。分からないのは、潰玉が芥川賞の候補にあがっていたこと。次の作品が楽しみである。

たそがれ刻はにぎやかに/木村紅美

就職したばかりの頃に住んでいたマンションを思い出した。くららも顕も登場はしなかったけれど、もう終わってゆく部屋という意味でシンクロしてしまった。あのマンションはまだあるのだろうか?食べ物の描写が少ししつこい気がしたけれど、それが部屋の雰囲気を上手に表現していたと思う。主人公はくららなのか?顕なのか?と思っていたけれど、たそがれ刻の部屋なのだと最後に気がついた。あれ?違う?

夜に知られて/上村渉

文學界新人賞受賞第一作。受賞作と同じ構造となっている小説。主人公はきっとチズだと思うのだが、金村美樹の独白のような手紙が物語を牽引してゆく。主人公であるチズはどこにでもいる夫の浮気に思い悩む妻だ。彼女はデパートで身に着けるもの全てを衝動買いをする。その奇行が唯一チズを立体的にしている場面だと思う。最後の手紙の署名が苗字だけになっていたのは、良かったかもしれない。