第一阿房列車/内田百輭

第一阿房列車 (新潮文庫)

第一阿房列車 (新潮文庫)



内田百輭の二冊目。いわゆる「何の用事も無いが、大阪まで汽車で行ってみようと思う」というヤツだ。こんな風に自由に列車で気の赴くままに旅ができたらさぞかし楽しいだろうと思いきや、用事があったら阿房列車にならないとばかりに、地方で百輭に依頼されることは全て断わらなければならなかったり、気の利かない仲居に腹を立てたりして、思うことだらけだ。あまり楽しそうではない。でも、全く奇を衒うことなくそこに存在している無名の風景に感動したりするところは、心底羨ましくなる。いちいち列車名が登場し、時刻表と照らし合わせて書いているところが百輭先生らしい。頑固で神経質なお爺さんだ。