ブラック・ティー/山本文緒

ブラック・ティー (角川文庫)

ブラック・ティー (角川文庫)



この本を読んだのは、2回目。人の中にあるイメージとのギャップを集めた短編集というべきか。そうは見えない人が電車の中で置き引きを狙っていたり、まじめで優しい夫が妻の傲慢さにキレてしまったり、恋人の立ションを軽犯罪だと糾弾する女性がキセルをやっていたりする。人はそうとは気がつかずに、小さな犯罪を犯してしまう。追い詰められて、それがどうしようもなく大きくなることもある。自分たちも犯罪と無縁ではないのだ。犯罪を犯す人は意外と自分のように平凡な弱者なのかも知れないのだ。とつくづく思う作品だった。