プラナリア/山本文緒

プラナリア (文春文庫)

プラナリア (文春文庫)


南図書館
自分の認識とごく身近にいる家族や恋人の考え方との微妙な差にフォーカスし、それぞれの立場から見たエゴイズムが書かれている。切り口が同じでも主人公や取り囲む周りの人々の立場を変えるとなかなか面白い。認識や意識のずれは、もともとあったはずなのに、何かをきっかけに顕在化する。今まではとても満足していて、嬉しかったことにも鼻白んでしまう。でも、もう嬉しくない「幸せ」であろうものたちを捨てる勇気はない。どっちへ進むのか自分で自分がわからなくなってゆく。よくいそうな等身大の30代の女性たちを巧みに描いている。山本文緒ならではという感じ。わかるー、と言いたくなってしまうシーン満載。直木賞受賞作品。